青年団「月の岬」

人間は斯様に「えげつない」ものなのか。 

こういうたぐいのお話をF’s companyの「けしてきえないひ」や「ツキコイシ」、
Hit!Stageの「白波の食卓」や「春の鯨」、「Case3~よく学ぶ遺伝子」
更には「西の桜」という「月の岬」の舞台である長崎の劇団が
こういった同じ「因業」の物語を演ったものを
さんざん地元の空気で見てきたが、それ以上にえげつない。
人が因業に振り回される、とはこんなに恐ろしいことなのか、
この現実とどう向き合い、どう受け止めるか、ある種の戦慄を感じた。

 表演空間が東南アジアを始めとした亜熱帯気候の
空気をはらんだ作りになっていて、ものすごくおしゃれだ。
そのおしゃれな空間に母親がすうっと出てきて「物語」に
見手が入っていく準備をいつの間にか始めている。
というか、一歩表演空間に足を踏み入れた瞬間、
物語が始まっている。
どこかしらから鳴っている「無音の音」までもが重苦しい。

 その重苦しさを背負って今日はめでたい結婚式。
・・・それにしても朝ごはんの時からえらくだらだらしてる。
時間に追われているはずなのに、なんかゆっくりしてる。
高菜の油炒めをおかずにしてお新香をつまみながら
ご飯を食べ、味噌汁を飲む。
食べ終わったらこれまたゆっくりと支度をする。
そして長崎市内に向かう船が出港するギリギリになって
ようやく重い腰を上げる。

 この一連の流れこそがこのあとの「すべて」を暗示している。
この島がとその住人が持つ不思議な引力に気がつけば巻き込まれて、
「よそ者」という異物がこの島に入ってきたことから生じるたくさんの
「反発力」が微妙に色合いの違う「灰色」となって表演空間を包む。

 この灰色こそがだれもが持っている「秘密」というものであり、
「タブー」と呼ばれているものの正体なのだろう。
どこか、この島はそういった「タブー」や「秘密」を守るために
「閉ざされること」を望んでいたのかもしれない。
そして、これらの秘密やタブーを一度のぞいて、触れてしまったが最後、
形はどうであれ、この島を出ていくように「天の配剤」によって
仕向けられる、というある意味恐ろしいことを極めてあっさりと見せている。
「そうなったものは、仕方がないじゃないか」と言わんばかりに。

 だから、あるものは長崎に残りたい、と思っていたのが
東京の大学に行ってみたい、と言い出すし、
今まで隠していた「好き」を果たすためにさようならも言わずに消えちゃうし、
そのいざこざで複数の家族がつながりをなくしてバラバラに成っちゃうし、
なにか異質なものが入ってきてエネルギーが異常に高まって
すべてが壊れた、さすがにつらいし、しんどい、けれどもこれは「再生の痛み」。
この再生の痛みをどう乗り越えるか、それは人それぞれ違うのだ。

 ものすごく心がヒリヒリして切ない気持ちになって、
じわじわと戦慄を持った切なさがわたしを包み込んでいく。
そんな状態で福岡に帰ると今までの緊張が体中に来て
珍しく体調を崩してしまった。
それほどパワーのある、というかありすぎるお話だった。
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