赤星マサノリ×坂口修一 二人芝居全国ツアー2014-2015 「Equal-イコール-」

どこか切ない「おとなのファンタジー、もしくはメルヘン」。

 この戯曲を書いた末満健一という人、「例のこと」が元で
わたしはあまり赦せないところがあるけれど、作っている「もの」の
クオリティがものすごく高いし、そういうものを作ることができるからこそ
「心地良い」と「気持ち悪い」の「価値基準」が凡人以上に厳しくて
この「価値基準」を凡人にも平気で要求する、ならば黙って従うしかない。
・・・言いたいことはあるけれど、わたしの腹の中に納めればそれでいい。

 こういった質が高く、厳しすぎる「価値基準」から生まれた「美学」を
「力のある個」が演り、これがふたつ掛け合わされたならば、
一体何が起こるのだろう?

 表演空間からしてものすごくアートで、「異国感」というものが半端ない。
そして、きっちりと黒滔々たる闇がきちんと出来ていて、
この闇からさっと明るくなると演者ふたりが場の空気を探るかのように
前説を始めていく。

 前説のネタが土曜日17時からの「鋼の錬金術士」やその後番組
「進撃の巨人」を使っている所為かこの番組をリアルで知らない、
というか見ていないからどうもしっくり来ない。
故に、後ろの方にいる学生たちが面白がっていることがわからない。

 この時間帯は演劇見てるか、野球見てるか、サッカー見てるか、
あるいは寝ているか、という行動をわたしはしているのだろう。

 不思議な違和感を感じていると板の上では月曜日から始まる
「出来事」というものが静かに動き始めている。
月曜日、火曜日、水曜日は「主治医とその患者」、もしくは
「古くからの友人」と演者ふたりがそれぞれの立場を曜日ごとに
入れ替えながらなんとも奇妙な男二人の「同居生活」というものを
ユーモアたっぷりに見せ、時折後ろから面白がる声も聞こえる。

 しかし、木曜日から物語というものは突然、緊張感という
強度を伴って、見手に襲い掛かってくる。
気が付くと、いつの間にか「わたし」は「あなた」を乗っ取り、
「あなた」も「わたし」を乗っ取っている。
そんな様子から生まれる戦慄感が半端ない。

 この半端ない戦慄感を抱えて金曜日、土曜日は
いま、ここにある全ての出来事の「種明かし」をする。
「わたし」は「医者」であり、「錬金術士」という
いわゆる「化学者」の「始祖」だった。

 「わたし」は当時では「死の病」である結核という病にかかり
このままでは「身体」と「精神」というふたつの「滅び」がやってくる。
これらの「滅び」を少しでも引き伸ばすために「わたし」は
ひとつの「魔法」を編み出した。

 「もうひとりの私」を作る、という「魔法」というものを。
やり方としてはまず、「わたし」の「核」になるものを「あるやり方」で
取り出して、培養すると、弱く、小さい「もうひとりの私」が生まれる。

 この弱く、小さい「もうひとりの私」に自らの「血」を与えることで
「もうひとりの私」は「わたし」へと少しずつ変化していく。
そういうことで「身体」の滅びは少しだけ食い止めることができた。
けれども、自らの「血」を与える、ということは精神も少しずつ
「わたし」と重なっていく、ということ。

 そうなってしまうと姿形は異なるが、「精神」がほぼおなじになってしまう
「わたし」という「ふたり」が別々に「出来事」を起こし、
そうすることで「現実」というものが複数に化けてしまい、
何がなんだか分からない世界へと巻き込まれていく。

 巻き込まれてしまうと「過去」という「現実」と「現在」という「現実」の
ふたつがいま、ここに同時並行している、そのさまを見て
見手は心のなかにぞわざわ感を抱え、その場に凍りついてしまう。

 戯曲の持つ力が半端ないから、「生きて帰りし感」が強く出ている。
強く出ているから、人はみな、いずれは「滅んでいく」が、何時かは
「新しき人」として「新しき世」へと還っていくことができる。
これを人は「往きて還りし生の輪廻」というのだろう。

 だとすれば、「滅ぶ」ことを拒否して身体と精神を
「その場」に「生きて、留める」ということができるならば、
この「出来事」は素晴らしく、幸せなことなのだろうか?

 「行ったら行きっぱなし、帰ることを拒否する」生き様は
果たしてどうなのだろうか、という問を残して物語は消える。

 この、「苦くて辛い」見後感が、「大人のファンタジー」や
「大人のメルヘン」が持っている味わいなのかもしれない。
「苦くて辛い」を「強い個」を持つ演者ふたりがギリギリまで
表現しきってしまうと半端ない「苦さ」と「辛さ」が生まれる。
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