下鴨車窓 「渇いた蜃気楼」

妙に喉が渇く。

  終演後、体中から水気が抜けて、パサパサになっている。
落ち着いて一番最初にやったことは炭酸水を買って、飲むこと。

 そういえば、このカンパニーが最初に福岡へやってきた
「人魚」の時も自分はえらくバタバタだったわけで。
金曜日は小倉でBlockを見て、夜行バスで大阪、
それからINDEPENDENTセレクションを見、その日は大阪に泊まって、
翌日新幹線で博多について、財布をみるとチケット代ギリギリの
お金しか入っていない、そんなことを思い出しながら空間を感じる。

 ・・・というか、田辺剛、という書き手の「時期」をめぐる
「基本的なルーリング」は「夏」が多いような。
ああ、あともう数ヶ月するとセミがみんみんみしみし鳴く声を聞きながら
朝、起きていくのか、その空気で存在する状況は恐ろしいほどカオス。
書類、というのが正しいのか何かわからないが、紙があちこちに
散乱し、輪をかけて発泡酒の空き缶が散乱している。

 そこに女の人がやってきて、テレビをつけて、DVDを見ながら
少し、どころか結構エロいダンスをやりだしたら、
いつの間にか場の空気が夏の夕方、それもかなりの期間、
雨の降っていない、ひりつくようなあの熱さに変化していた。

 お話の肝、というか「基本線」はある夫婦が「マツトミ」という
「マチ」にも取れるし、「カイシャ・キギョウ」にも取れる、
「マチ」と「カイシャ・キギョウ」に共通することはただ一点、
人々を「縛る」、ある意味、「檻」のようなところから「脱出」して
なんやかんやあってかなり離れた「場所」、それも坂の上に
ある、ところに移り住んだ「日常」。

 この夫婦の「生活」は扇風機がない、ましてや冷房もない、
水道もこの「渇水期」では用をなさない、おまけに寝るための布団すらない。
夫はなんかの事情で失業者になったばかり、
ということで妻のパートが家計を支えている。

 その「場」に夫にとっては「友人」、妻にとっては「元彼氏」が
突然飛び込んで、「過去」というやつをじわりじわりと見せていく。
「板の上での現実」では見えない、いや見えるわけのない
「ガキが川辺でキャンプしていやがる」、という話をじわじわ話す。

 というか、そこまでにいたるところで妻が水を飲んでお腹おさえていたろ?
・・・最初は「水にあたった」かと思ったさ、けれども見えるわけのないお話を
あたかも「いま、そこで起こっているように」話して、
見せてしまうと、恐ろしいことに。
「キャンプ」の話は、もしかしたらこの「3人」の中で「高校時代」に
「実際」起こった話だったのかもしれない。
 
 だとしたら、「妻」はそのとき「元彼氏」の子供を「妊娠」していた。
ということか、それなら「お腹を押さえる」ムーブにも意味があるわけで。

 その後の話はうまくぼやかしているが、狭すぎる「檻の中」では
悪いようにしか話が伝わらず、妻は逃げるように「檻の中」から脱出し、
同じく「脱出」していた夫と結婚して、今に至る。

 これらの「会話」が責めるでもなく、憐れむでもなく、
ごくごく普通の感情で、淡々と続き、カオスな一日が終わり、
朝がやってきて、給水車から水をもらうことから始まる「新しい日常」。

 盗まれていた自転車も戻り、妻は中絶の影響なく子供が産めそうだ。
何か別のことが起こりそうだが、それはそれで、という塩梅で終わり。

 ああ、「夫婦」はこういうなんだかんだを通って「夫婦」になるのだな。
自分も「大切な人」との関係がこういう風になっちゃうのかな、
そして結婚にまでたどり着くのだ、と思ってしまった。
この思いが真夏の雨が降らない「ひりつく暑さ」と重なって、
なんとも言えない「状況」に対する「もどかしさ」に化けてしまう。

 その「もどかしさ」を解決するためには部屋を片付けて、紙と缶を捨てて、
布団を買って、敷いて、寝よう。  

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